2014年(51巻)第1号【HTML】

研究報告


遺伝・育種
比較染色体マッピングにもとづく、ニワトリとカモ目3種、アヒル、バリケン、シナガチョウの染色体構造の比較と核型進化の推定
イスラム・ファミダ・ビンテ・宇野 好宣・布目 三夫・西村 理・樽井 寛・阿形 清和・松田 洋一



飼料・栄養
コクシジウム負荷ブロイラーにおける非抗生物質系代替物の抗炎症効果
Hang Lu・Sunday A. Adedokun・Layi Adeola・Kolapo M. Ajuwon

非線形モデルおよび多変量非線形混合効果モデルを用いた換羽後産卵鶏のリン要求量の推定
Saeed Khalaji・Amir H. Naderi・Seyed N. Mousavi・Mojtaba Zaghari・Ahmad Malakzadegan

フィターゼ遺伝子導入トウモロコシがブロイラーの成長とカルシウムおよびリンの利用性に与える影響
Dan Wu・Junmin Zhang・Xiuqi Wang・Liqing Deng・Lijun Li

孵化前後のバリケン小腸におけるグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)および脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)に関する免疫組織学的研究
Baoan Ding・Carla Lenzi・Andrea Pirone

透析ホエーがニワトリの成長と小腸からの栄養素吸収に及ぼす影響
伊藤 謙・喜多 一美


ニワトリヒナにおける飼料用米の嗜好性および消化管通過に関する研究
山長 聖和・古瀬 充宏


飼料用籾米全粒と置換した飼料を給与した鶏の成長および腸管の組織学的変化
シッチティヤ ジャンジーラ・山内 高円


飼料中ルテイン源が産卵系のルテイン移行卵生産および血中抗酸化システムに及ぼす影響
Insurk Jang・Younghyun Ko・Sunyoung Kang・Seyun Kim・Minhae Song・Kyeman Cho・Junsang Ham・Seahwan Sohn

ブロイラーにおける食餌中魚油と亜鉛はホスホリパーゼA2生産を阻害することにより血漿プロスタグランジンE2量を減少させる
Guanzhong Liu・Shengying An・Jianmin Yuan・Yuming Guo・Dan Liu・Hui Chen・Renlu Huang

A. oryzaeで発酵したキャッサバパルプ飼料をブロイラーに与えた時の成長成績、栄養素消化率および屠体特性
Sutisa Khempaka・Ruthairat Thongkratok・Supattra Okrathok・Wittawat Molee

生理・繁殖
急性暑熱暴露に対する生理および行動反応に及ぼす幼雛期温熱処理の効果
谷澤 宏・白石 純一・河上 眞一・都築 政起・豊後 貴嗣


ニワトリ始原生殖細胞様細胞の維持増殖、長期生存および生殖系列伝達のための培養条件
宮原 大地・森 貴史・牧野 龍一・中村 隼明・大石 勲・小野 珠乙・韮澤 圭二郎・田上 貴寛・鏡味 裕


免疫・衛生
ニワトリマクロファージにおける炎症メディエーターの転写および翻訳活性に対するバクテリオファージの効果
Juhee Ahn・Song-rae Kim・Lae-Seung Jung・Debabrata Biswas

(研究ノート)
市販のニワトリ肝臓におけるアミロイド沈着と細菌汚染の疫学調査
石黒 直隆・村上 智亮・アブデルアジム,エルヘラリー・猪島 康雄


 


比較染色体マッピングにもとづく、ニワトリとカモ目3種、アヒル、バリケン、シナガチョウの染色体構造の比較と核型進化の推定

イスラム・ファミダ・ビンテ1・宇野好宣1・布目三夫1・西村 理2, 3・樽井 寛4・阿形清和3・松田洋一1, 5

1 名古屋大学大学院生命農学研究科応用分子生命科学専攻動物遺伝制御学研究分野
2 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター ゲノム資源解析ユニット
3 京都大学 大学院理学研究科 生物科学専攻 生物物理学教室
4 理化学研究所横浜研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター
5 名古屋大学大学院生命農学研究科附属鳥類バイオサイエンス研究センター


キジ目(Galliformes)とカモ目(Anseriformes)は、新口蓋上目の鳥類で最も分岐年代が古く、約1億年前に共通祖先 (Galloanserae)から分岐したと考えられている。キジ目に比べカモ目では染色体構造に関する情報が少ないため、カモ目内ならびにキジ目-カモ 目間に生じた染色体再配列の過程はほとんど不明である。本研究では、カモ目に生じた染色体の構造変化を明らかにするために、カモ目カモ科3種(アヒル、バ リケン、シナガチョウ)について、比較染色体ペインティング、ならびにリボソームRNA遺伝子、テロメア配列、37機能遺伝子の染色体マッピングを行い、 カモ科3種間、そしてカモ科とニワトリとの間で染色体構造の比較を行った。その結果、カモ目3種とニワトリ間の染色体相同性は極めて高く、大型染色体 (1-9番、Z染色体)は4番染色体を除いて相同であった。サブメタセントリック型のニワトリ4番染色体は、カモ目3種ではアクロセントリック型の4番染 色体と1対のマイクロ染色体に対応することから、ニワトリにおいて、祖先型の4番染色体とマイクロ染色体間で動原体融合が生じたことが示唆された。また、 染色体地図の比較から、カモ科3種内では、アヒル・バリケン-シナガチョウ間で4番染色体とZ染色体で挟動原体逆位が生じ、カモ科-ニワトリ間では2番染 色体に挟動原体逆位、Z染色体では挟動原体逆位と偏動原体逆位を含む複数回の逆位、あるいは動原体位置の移動が生じたことが示唆された。これらの結果は、 カモ目の染色体は保存性が非常に高く、しかもキジ目との共通祖先から分岐した後も、カモ目-キジ目間でほとんど染色体構造に変化が生じていないことを示し ている。

キーワード:カモ目、キジ目、染色体マッピング、比較染色体地図、染色体構造変化、核型進化  


透析ホエーがニワトリの成長と小腸からの栄養素吸収に及ぼす影響

伊藤謙・喜多一美

岩手大学農学部 岩手県盛岡市 020-8550


   ホエーは牛乳からチーズを作る際の副産物であり、ホエーから分離されたホエー蛋白質は畜産における飼料原料として使用されている。しかし、未処理のホエー を飲用としてニワトリに用いると成長が抑制されることが知られている。また、飼料への乳酸添加がニワトリの飼料摂取量を抑制することが報告されており、未 処理ホエー中の乳酸がニワトリの飼料摂取量と成長を抑制させた可能性が考えられた。そこで本研究では、未処理ホエーを透析して乳酸を含む低分子化合物を除 去し、透析したホエーをニワトリヒナに経口投与して成長成績と腸管からの栄養素吸収に及ぼす影響を調べた。未処理ホエーを経口投与したニワトリの増体量 は、水を投与したニワトリの増体量より有意に低下した。また、飼料摂取量は、増体量と同様の傾向が認められた。透析したホエーを投与したニワトリの増体量 は、対照区との間に有意な差は認められなかった。グルコース-アミノ酸混合溶液を未処理ホエーと共にニワトリに経口投与したところ、未処理ホエー区の血中 システイン濃度が透析ホエー区より有意に上昇した。以上の結果から、透析によるホエーからの低分子化合物の除去は、ニワトリの成長に対してホエーが有する 悪影響を低減するのに有効であると考えられた。

キーワード:吸収、アミノ酸、透析、乳酸、小腸、ホエー 


ニワトリヒナにおける飼料用米の嗜好性および消化管通過に関する研究

山長聖和・古瀬充宏

九州大学大学院生物資源環境科学府, 福岡県福岡市東区箱崎6-10-1 812-8581  


飼料用米はとうもろこしと同等の栄養価を持つと言われており、現在成鶏で用いられているが、ヒナの段階においても利用可能かどうかについては明らかでな い。玄米の嗜好性が低いことは報告されているが、消化率の低い籾米に関する情報はない。そこで本研究では、ニワトリヒナにおける飼料用籾米の嗜好性と消化 管通過速度の改善の途を明らかにすることを目的とした。市販飼料への混合または籾米の早期学習による嗜好性改善の効果を検討した結果、早期学習によらずと も嗜好性が高いことが確認された。また、市販飼料の60%を籾米で置換した場合に摂食量の亢進が見られた。一方、籾米の消化管通過速度に関しては、グリッ トとリジン添加時には影響が見られなかったが、消化酵素の添加によって排泄時間が短縮されることが明らかとなった。以上より、籾米を市販飼料に配合すると 飼料摂取量は改善され、また消化酵素を添加することで消化管通過速度は改善されることが示唆された。

キーワード:飼料用米、ニワトリヒナ、嗜好性、消化管通過速度 


飼料用籾米全粒と置換した飼料を給与した鶏の成長および腸管の組織学的変化

シティヤ ジャンジラー・山内 高円

香川大学農学部応用生物科学科,香川県木田郡三木町, 761-0795


基礎飼料を飼料用籾米全粒 (WPR)で置換配合した試験飼料を給与した鶏における成長および腸管絨毛や上皮細胞の組織学的変化を検討するために,2週齢時に類似した体重の讃岐コー チン雄鶏を各区10羽ずつの3区に分けた。対照区は基礎飼料(幼雛用飼料 CP 21%, ME 3000 kcal/kg; 中雛用飼料 CP 18%, ME 2850 kcal/kg; 大雛用飼料CP 15%, ME 2800 kcal/kg) を,その他の区は基礎飼料をWPRで20% (幼雛用飼料CP 17.8%, ME 2958 kcal/kg; 中雛用飼料CP 15.4%, ME 2838 kcal/kg; 大雛用飼料 CP 13%, ME 2798 kcal/kg) および 40% (幼雛用飼料CP 14.6%, ME 2916 kcal/kg; 中雛用飼料 CP 12.8%, ME 2826 kcal/kg; 大雛用飼料 CP 11%, ME 2796 kcal/kg)で置換配合した試験飼料を給与した。鶏は明期16時間,暗期8時間の照明管理下で室温5℃の開放鶏舎内で個別ケージにて11週間飼育さ れ,飼料摂取量や体重を毎週測定した。飼育試験終了時に,腸管の長さおよび内臓の重量を測定し体重比に換算した。また,他の鶏の腸管は光学・電子顕微鏡の 観察に用いた。20%と40%WPR区の筋胃の重量が増加した(p<0.05)こと以外には, 成長および腸管の長さや内臓の体重比に差はみられなかった。全ての腸管各部位において,絨毛高や細胞分裂数に差はみられなかったが,40%WPR区の回腸の絨毛面積や20%と40%WPR区の十二指腸細胞面積は減少した(p<0.05)。電子顕微鏡による観察では,実験区の絨毛頂部表面の細胞は隆起 しており,籾米によるダメージは認められなかった。このような結果は,飼料米は鶏用飼料源料として籾全粒の状態で40%までは基礎飼料と置換配合できるこ とを証明する。

キーワード: 成長,腸管組織学的変化,讃岐コーチン,飼料用籾米全粒


急性暑熱暴露に対する生理および行動反応に及ぼす幼雛期温熱処理の効果

谷澤 宏1・白石純一2・河上眞一1・都築政起1,3・豊後貴嗣1, 3

1広島大学大学院生物圏科学研究科、東広島市 739-8528
2日本獣医生命科学大学動物科学科、武蔵野市 180-8602
3広島大学日本鶏資源開発プロジェクト研究センター、東広島市 739-8528


 ニワトリにおいて、幼齢期温熱処理が耐暑性の獲得に有効であることが知られている。本研究では、白色プリマスロックを用いて幼齢期温熱処理の効果につい て検討した。実験は、6日齢時に40℃、3時間の温熱処理を行ない、その後の増体および摂食量を測定するとともに、10日齢時には暑熱環境(40℃)に 15分間暴露し、温熱処理の影響を調べた。なお、温熱処理を行なっていない個体を同様に暴露して対照とした。測定項目は、暴露時の体温調節行動(開翼、パ ンティング)の開始時間、曝露前後での直腸温および呼吸数、および曝露終了後の血液性状および間脳遺伝子発現とした。温熱処理は、増体および摂食量に影響 を及ぼさなかったものの、暑熱暴露時において体温調節行動の開始遅延および直腸温上昇の緩和効果が認められた。さらに、間脳における体温調節関連ペプチド の発現および血漿コルチコステロン濃度が、温熱処理区のもので低下することが示された。以上の結果から、3時間の温熱処理は、ニワトリヒナの暑熱暴露に対 する行動および生理反応を変えることが明らかになるとともに、白色プリマスロックにおいても幼齢期温熱処理によって耐暑性の獲得が可能であることが考えられた。

キーワード:温熱処理、耐暑性、暑熱暴露、ニワトリヒナ 


ニワトリ始原生殖細胞様細胞の維持増殖、長期生存および生殖系列伝達のための培養条件

宮原大地1、2・森貴史1・牧野龍一1・中村隼明3・大石勲4・小野珠乙1・韮澤圭二郎2・田上貴寛2・鏡味裕1

1信州大学農学部、長野県南箕輪村8304 399-4598
2畜産草地研究所、茨城県つくば市池の台2 305-0901
3基礎生物学研究所、愛知県岡崎市明大寺東山5-1 444-8787
4産業技術総合研究所、大阪府池田市緑丘1-8-31 563-8577  


遺伝子改変ニワトリを作出するためには、配偶子の起源となる始原生殖細胞(PGCs)の遺伝子改変技術が有効である。しかしながら、純化したPGCへの遺伝子導入効率は低い。PGCsの遺伝子改変を効率的に行うためには、増殖効率の高いPGCsの培養技術が求められる。そこで本研究では、ニワトリPGCs の増殖効率を高めるために最も適切な培養条件を検討すると共に、確立した条件による長期培養PGC細胞の配偶子形成能の有無を検証することを目的とした。 2.5日胚の採血液をvan de Lavoirら(2006) の方法に従って培養することにより、雄胚に由来するPGCsに酷似した形態的特徴を持つ細胞(PGC-like cells;PGC-LCs)が得られた。PGC-LCsが増殖するのに最適な条件を求めるため、フィーダー細胞および添加するサイトカインを検討した結果、最も効率的にPGC-LCsを増殖させる培養条件は、BRL細胞をフィーダー細胞として使用し、bFGF単独あるいはbFGFとSCFを複合して添加 した培養系であった。この条件により長期培養を行ったPGC-LCsは、未分化型生殖細胞としての組織学的・遺伝的特徴を有していた。続いて、培養225日ならびに232日に達した横斑プリマスロックのPGC-LCsを白色レグホン初期胚へ移植し、生殖系列キメラを作出した。後代検定の結果、培養 225日のPGC-LCsを移植したキメラニワトリから、培養細胞に由来する後代を得ることに成功した(6%;3/50)。本研究では雄胚に由来する PGC-LCsの増殖効率の高い長期培養条件を見出し、さらに培養細胞が配偶子分化能を有していることを明らかにした。

キーワード:ニワトリ、始原生殖細胞、始原生殖細胞様細胞、生殖系列キメラ


市販のニワトリ肝臓におけるアミロイド沈着と細菌汚染の疫学調査

石黒 直隆1,2・村上智亮1,2・アブデルアジム,エルヘラリー1,2,3・猪島 康雄1,2

1岐阜大学応用生物科学部獣医学課程 岐阜市柳戸1-1501-1193
2岐阜大学連合獣医学研究科 岐阜市柳戸1-1 501-1193
3スエズ・カナル大学獣医学部 エジプト


食鳥肉の衛生上の観点から、食鳥検査所由来の採卵鶏197羽の肝臓と5小売店の市販ブロイラー100羽の肝臓について、アミロイド沈着と細菌の分離状況を調査した。アミロイド沈着は2歳齢の産卵鶏の肝臓1検体からコンゴレット染色と免疫組織化学検査で検出されたが、若い100羽のブロイラー由来の肝臓からは検出されなかった。産卵鶏およびブロイラー由来の肝臓について細菌数を普通寒天培地、デオキシコレ‐トハイドロジェン寒天培地、変法CCDA培地で検査 したが、アミロイド沈着と総細菌数や細菌種との密接な関係は見られなかった。本研究で、市販のニワトリ肝臓でのアミロイド沈着は少ないことが明らかとなっ た。

キーワード:アミロイド、細菌数、ブロイラー、採卵鶏、肝臓


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