2013年(50巻)第4号【HTML】

研究報告


遺伝・育種
産業用ブロイラーの後部麻痺に関連した中軸骨格異常の発生に関する病理形態学的研究
Ivan Dinev

マイクロサテライトマーカーを用いた台湾商用在来鶏の遺伝的特徴
Manh-Hung Pham・Wei-Hua Chang・Cécile Berthouly-Salazar・Der-Yuh Lin・Sukanya Yungrahang・Chien-Chan Wang・Yen-Pai Lee・Michèle Tixier-Boichard・Chih-Feng Chen

ニワトリL-BABP と L-FABP遺伝子のSNPs単離および成長,生体構成成分形質との関係
Yufang Zhao・Enguang Rong・Shouzhi Wang・Hui Zhang・Li Leng・Yuxiang Wang・Qigui Wang・Hui Li

ドバンの雄性不妊は第一精母細胞における減数分裂の停止をともなう
イスラム ファミダ ビンテ・石下聡・宇野好宣・モラ モハンマド バズルラハマン・ スリクルナス コンソーン・松田洋一


日本鶏、土佐小地鶏ヒナにおける持続性不動状態の加齢性変化
中斉えり子・谷澤 宏・高脇美南・柳田光一・河上眞一・岡 孝夫・都築政起・豊後貴嗣


(研究ノート)
ニワトリとウズラとの雑種において筋形成に関連し,筋肉特異的に発現するcDNAライブラリー作製とその解析
YaoWei Liang・Wei Zhen・MiLa G.L. Jiaerheng・ZongSheng Zhao・HongMei Zhang

飼料・栄養
アマニ油とヤシ油の混合物は暑熱暴露されたブロイラーにとって良い油脂源になる
Jianjun Wang・Qiufeng Zhu・Ahmad Hussain・Xuhui Zhang・Tian Wang

穀物タンパク質のトリプシン消化産物が小腸からのグルコースおよびアミノ酸吸収に及ぼす影響
伊藤謙・喜多一美


高温環境下でのブロイラーにおける飼料への重炭酸ナトリウム添加限界量の推定
Yunzhi Peng・Yongwei Wang・Dong Ning・Yuming Guo

飼料中カノラ種菜種粕と補足銅のレベルがブロイラーの成長、臓器重量及び血液性状に及ぼす影響
Sina Payvastegan・Parviz Farhoom・Negin Delfani

(研究ノート)
成長中のニワトリヒナ視床下部におけるニューロペプチドY,プロオピオメラノコルチン及び副腎皮質刺激ホルモン放出因子のmRNA量の加齢変化
實安隆興・中西貴和子・熱田博之・以倉淳志・上曽山博・長谷川信・本田和久


(研究ノート)
濃厚洗米排水の給与がブロイラーの生育成績と骨格筋の脂質過酸化度に与える影響
井尻 大地・中村 祥吾・立川 健治・井尻 哲・大塚 彰


生理・繁殖
(研究ノート)
孵卵中及び孵化後のブロイラーの成長と胚および卵殻性状との生理的関係
Radhakrishna Pulikanti・Edgar D. Peebles・Lloyd W. Bennett・Wei Zhai・Patrick D. Gerard
(研究ノート)
ニワトリの胚発生に伴う肝臓と筋肉における糖新生鍵酵素の遺伝子発現の変化
Tushar Kanti Roy・岩澤 淳・志水泰武・景山幸二・吉崎範夫


免疫・衛生
ニワトリ単球におけるマンノース受容体リガンドはToll-like 受容体の遺伝子発現を調節する
Li Yan・Zandong Li

生産物・加工
高濃度の塩化ナトリウムで前処理した冷凍鶏ムネ肉の品質特性
Massimiliano Petracci・Simone Rimini・Roel W. A. W. Mulder・Claudio Cavani

 


ドバンの雄性不妊は第一精母細胞における減数分裂の停止をともなう


イスラム ファミダ ビンテ1・石下聡1・宇野好宣1・ モラ モハンマド バズルラハマン2・スリクルナス コンソーン3・松田洋一1

1 名古屋大学大学院生命農学研究科
2 バングラデシュ農業大学畜産学部 3 カセサート大学理学部


雑種不妊は、交雑によって生じる種間の遺伝的交流を防ぐ生殖後隔離機構の一つである。アヒルとバリケンのF1雑種(ドバン)は、鳥類における雑種不妊の研究の良い実験モデルとなる。このF1雑種は、比較的大きな精巣をもつにもかかわらず精子が産生されないため不妊となるが、その減数分裂の特徴についてはまだ良く知られていない。本研究では、ドバンの精巣における減数分裂の表現形質と、アヒルとバリケンの染色体の形態の違いについて報告する。ドバンの精巣では、精上皮は正常に発育・分化するが、異常に凝縮した染色体をもつ細胞の蓄積が見られ、そして第二精母細胞と減数分裂後の精子細胞と精子が存在せず、アポ トーシスによる細胞死が高頻度に観察された。精母細胞の減数分裂像の観察から、減数分裂は第一精母細胞のパキテン期までは正常に進行するが、移動期から第 一減数分裂中期以降には進まず、おもにパキテン期で細胞の退縮が生じていた。体細胞を用いた核型解析の結果、アヒルとバリケンの間で1番染色体とZ染色体 の形態に違いが見られた。以上の結果から、ドバンにおける精子形成異常の主たる原因は、パキテン期と第一減数分裂中期における減数分裂の停止であり、これは両種間の染色体構造の違いに起因する染色体の不適合性によって引き起こされる相同染色体の対合阻害と、それにともなう染色体組換えと染色体分離の異常の 結果である可能性が示唆された。

キーワード:アポトーシス,染色体不適合性,雑種不妊,減数分裂停止,ドバン,生殖後隔離


日本鶏、土佐小地鶏ヒナにおける持続性不動状態の加齢性変化

中斉えり子 1・谷澤 宏 1・高脇美南 1・柳田光一 1・ 河上眞一 1・岡 孝夫 1, 2・都築政起 1, 2・豊後貴嗣 1, 2

1 広島大学大学院生物圏科学研究科、東広島市 739-8528
2 広島大学日本鶏資源開発プロジェクト研究センター、東広島市 739-8528  


土佐小地鶏ヒナの気質を調査する目的で、持続性不動状態試験を用いてヒナの恐怖特性とその加齢変化について調査した。試験方法は、ヒナを仰向け状態にして、その姿勢を持続した時間を計測するものである。すなわち、ヒナを仰向けにして15秒間保定後、静かに解放する。ただし、解放後の姿勢持続時間が5秒以下の場合は、再び仰向けにして同様の作業をくり返した。4試行でも成功しなかった場合は、試行回数は5回、持続時間は0秒とした。なお、試験は、2、5、 10あるいは15日齢のヒナを対象とした。持続時間は、2日齢においては雄の方が雌よりも短く、反対に15日齢では長くなることが示された。雄の持続時間は日齢間に差が認められるとともに、加齢とともに延長することが示された。一方、雌では、加齢とともに持続時間が短くなることが認められた。試行回数については、日齢および性による差は示されなかった。以上の結果から、土佐小地鶏ヒナの恐怖反応は、加齢とともに変化しすること、その変化は雌雄で異なることが明らかとなった。

キーワード:持続性不動状態、ストレス、恐怖、土佐小地鶏、ニワトリヒナ


穀物タンパク質のトリプシン消化産物が小腸からのグルコースおよびアミノ酸吸収に及ぼす影響

伊藤謙・喜多一美

岩手大学農学部 岩手県盛岡市 020-8550


本研究の目的は3種類の穀物トリプシン消化産物がニワトリ小腸からのグルコースおよびアミノ酸吸収に及ぼす影響について調査することである。第一に、経口投与したグルコースやアミノ酸が小腸からどのように吸収されるのか調べた。投与0、20、40、60、80、100および120分後に腸間膜静脈より採血 を行い、血清中グルコース濃度とアミノ酸濃度を測定した。血漿中グルコース濃度は、投与後20分でピークに達し、120分まで高い値を維持した。ほとんど の血漿中アミノ酸濃度は、投与後20分で最も高くなった。第二に、穀物タンパク質のトリプシン消化産物が小腸からのグルコースおよびアミノ酸吸収に及ぼす影響を調査した。小麦グルテン、トウモロコシツェインおよび大豆抽出タンパク質をトリプシンで消化し、得られた消化産物とグルコース‐アミノ酸溶液を混合した。混合物投与20分後に腸間膜静脈から採血した。血漿中グルコース濃度は、いずれの穀物タンパク質消化産物の影響も受けなかった。小麦グルテンのトリプシン消化産物は、フェニルアラニンとプロリンの血漿中濃度を有意に上昇させた。第三に、小腸からのアミノ酸吸収に及ぼす小麦グルテンのトリプシン消化産物とグルコースの交互作用を調査した。小麦グルテンのトリプシン消化産物による小腸からのアミノ酸吸収は、グルコースによって影響を受けなかった。以上の結果より、穀物タンパク質のトリプシン消化産物は小腸からのアミノ酸吸収を調節している可能性が示された。

キーワード: アミノ酸、グルコース、穀物 、小麦、小腸、トリプシン


成長中のニワトリヒナ視床下部におけるニューロペプチドY,プロオピオメラノコルチン及び副腎皮質刺激ホルモン放出因子のmRNA量の加齢変化

實安隆興・中西貴和子・熱田博之・以倉淳志・上曽山博・長谷川信・本田和久

神戸大学大学院農学研究科資源生命科学専攻 神戸市 657-8501


哺乳動物の摂食調節においては、視床下部神経ペプチドは生理学的役割を果たすことが示唆されている。しかしながら、 ニワトリにおいては、視床下部神経ペプチドの加齢変化についてはほとんどわかっていない。本研究では、我々は成長中のニワトリヒナにおける視床下部ニュー ロペプチドY(NPY,摂食促進ペプチド)、プロオピオメラノコルチン(POMC,摂食抑制ペプチドの前駆体)及び副腎皮質刺激ホルモン放出因子 (CRF,POMC誘導性の食欲抑制系の仲介因子)の視床下部mRNA量の加齢変化について調べた。7、14、21及び28日齢時に体重及び腹部脂肪重量 を測定し、NPY、POMC及びCRFの視床下部mRNA量をリアルタイムPCRを用いて調べた。視床下部NPY mRNA量は14及び28日齢において、7日齢に比べ、有意に低い値を示した。視床下部POMC mRNA量は28日齢において、7日齢に比べ、有意に低い値を示した。 視床下部CRF mRNA量は実験期間を通して有意な変化を示さなかった。腹部脂肪組織重量は14日齢以降に有意に増加した。我々の結果は、ニワトリの視床下部における NPYとPOMCの発現は加齢により変動することを示した。

キーワード:食欲、鳥、ニワトリ、摂食行動、視床下部


濃厚洗米排水の給与がブロイラーの生育成績と骨格筋の脂質過酸化度に与える影響

井尻 大地1・中村 祥吾1・立川 健治2・井尻 哲2・大塚 彰1

1 鹿児島大学農学部、鹿児島市郡元1-21-24 890-0065
2 食協株式会社、広島市南区松川町5-9 732-0826


本研究では、高温(130℃)または低温(60℃)で乾燥させた濃厚洗米排水(CRWW)の給与がブロイラーの生育成績と骨格筋の脂質過酸化度に与える影響を調べた。トウモロコシ-大豆粕を主体とした飼料(対照飼料)、トウモロコシの20%を無洗米製造副産物で代替した飼料(高温乾燥CRWW飼料および低温乾燥CRWW飼料)をチャンキー系(ROSS 308)雄ヒナに15日齢から12日間給与し、その間の体重と飼料摂取量を測定した。27日齢時にと殺し、浅胸筋の重量を測定した。また、浅胸筋は脂質過 酸化度の測定に供した。試験期間中の増体量、飼料摂取量、飼料効率には、CRWWを添加した飼料の給与による影響は認められなかった。試験終了時の体重お よび浅胸筋重量は、いずれのCRWWを給与した場合においても対照飼料と同等であった。高温乾燥CRWWを配合した飼料を給与したブロイラーの浅胸筋中の脂質過酸化度は、対照飼料を給与したブロイラーと比較して有意な減少が認められたが、低温乾燥CRWWを給与したブロイラーでは変化は認められなかった。 CRWWの活性酸素除去能および総ポリフェノール含量は、高温乾燥CRWWおよび低温乾燥CRWWのいずれもトウモロコシと比較して高かった。以上の結果 より、CRWWはトウモロコシの代替として利用できることが示唆された。また、高い活性酸素除去活性を有する高温乾燥CRWWの給与は骨格筋中の脂質過酸化を低下させる効果を持つことが示された。

キーワード: 濃厚洗米排水、ブロイラー、成長、脂質過酸化


ニワトリの胚発生に伴う肝臓と筋肉における糖新生鍵酵素の遺伝子発現の変化

Tushar Kanti Roy1・岩澤 淳2・志水泰武2・景山幸二3・吉崎範夫2

1岐阜大学大学院連合農学研究科,岐阜市 501-1193
2岐阜大学応用生物科学部,岐阜市 501-1193
3岐阜大学流域圏科学研究センター,岐阜市 501-1193


本研究では, ニワトリ胚が高血糖値を維持する生化学的メカニズムの解明を目指して,糖新生鍵酵素のmRNA発現の胚発生に伴う変化を調べた。孵卵13〜21日に白色レ グホーン胚(n=8)から肝臓と骨格筋を採取し,ピルビン酸カルボキシラーゼ(PC),細胞質型ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ (PEPCK-C),ミトコンドリア型ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK-M),筋肉型フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ (mFBPase),肝臓型フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(lFBPase),グルコース-6-ホスファターゼ(G6Pase)のmRNAを リアルタイムPCRによって定量した。その結果,肝臓ではすべての酵素が発現しており,骨格筋ではmFBPaseとG6Paseのみが発現していた。肝臓 では,G6Paseを除くすべての酵素は孵卵13または15日に発現のピークを示した。G6Paseは15〜19日の間,高い値を示した。骨格筋で は,mFBPaseは19日,G6Paseは15日にピークを示した。これらの結果から,ニワトリでは孵卵中から糖新生が行われているが,糖新生酵素の発現調節は臓器によって多少異なっていることが示唆された。また,骨格筋は通例糖新生を行う臓器とは見なされていないが,ニワトリ胚の血糖値調節にある程度寄与している可能性が示唆された。胚の骨格筋における酵素活性については今後詳しく検討する必要がある。

キーワード:ニワトリ,胚,酵素,糖新生,mRNA

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