2011年(48巻)第1号【HTML】

 第1号(英文誌)

総 説

鳥類の摂食調節における視床下部メラノコルチンシステム   (要旨)
豊後貴嗣・白石純一・河上眞一

研究報告

遺伝・育種

(研究ノート)
形質転換ニワトリ作成のための支持細胞を使用しない ニワトリ胚盤葉細胞の単純培養 (要旨)
松原 悠子・廣田あずさ・傍島英雄・鏡味 裕・田上 貴寛・安江 博

飼料・栄養

鶏の腸管各部位における飼料穀物のアミノ酸消化率の比較 (要旨)
上曽山博・本田和久・長谷川信

マリーゴールド花の粉末またはその抽出物由来のルテインによる生および加熱卵における卵黄色の増強 (要旨)
Kanda Lokaewmanee・山内 高円・小森 勉・斉藤 恵子

産卵鶏へのアスタキサンチン給与は高温貯卵した有精卵の孵化率を改善する (要旨)
齋藤文也・喜多一美

高地誘導性の低酸素状態下におけるブロイラーの成長成績と心臓ミトコンドリア機能に及ぼすコエンザイムQ10の影響 (要旨)
Beiying Huang・Yuming Guo・Xiaofei Hu・Yi Song

(研究ノート)
2種のブロイラーの成長成績と筋肉強度に関する市販ファイターゼの評価 (要旨)
Ashley L. Shaw ・John P. Blake・Edwin T. Moran, Jr.

生理・繁殖

鶏筋芽細胞の分化に伴うタンパク質分解関連遺伝子発現の変化(要旨)
中島一喜・石田藍子・勝俣昌也

凍結融解操作がニワトリ始原生殖細胞の生存性および機能性に及ぼす影響 (要旨)
中村隼明・臼井文武・宮原大地・森貴史・今井一樹・渡辺晴陽・小野珠乙・武田久美子・韮澤圭二郎・鏡味裕・田上貴寛


ニワトリ白血病阻害因子を用いて樹立した新規ニワトリ胚性幹細胞の特徴 (要旨)
中野幹治・有澤謙二郎・横山聡美・西本真樹・山下裕輔・坂下真耶・江崎僚・松田治男・古澤修一・堀内浩幸

免疫・衛生


産卵鶏子宮部におけるトリβ-ディフェンシン-3および-11蛋白密度のリポ多糖刺激に伴う変化 (要旨)
Ahmad M. Abdel Mageed・磯部直樹・吉村幸則




 

要 旨

 


第1号(英文誌)


鳥類の摂食調節における視床下部メラノコルチンシステム:総説

豊後貴嗣・白石純一・河上眞一

広島大学大学院生物圏科学研究科
東広島市 739-8528

摂食行動の調節を理解することは、動物生産において非常に重要な課題である。ニワトリの摂食量は、様々な制御機構が関係した複雑なホメオスタシス機構によって調節されている。近年、脳と末梢の神経ペプチドとの緊密な関係が明らかとなってきた。 視床下部漏斗核は,末梢のエネルギー状態を感知する重要な脳部位であり、そこに存在するメラノコルチンシステムは、これらの情報をもとに神経ペプチド (メラノコルチン、ニューロペプチドYおよびアグーチ関連蛋白質)を介して中枢の内分泌機構を調節している。本総説は、ニワトリヒナの摂食調節機構についてメラノコルチンシステムを中心にその役割および末梢と中枢における神経ペプチドの関係について概観する。

キーワード:メラノコルチンシステム、プロオピオメラノコルチン、ニューロペプチドY、アグーチ関連タンパク質、摂食量、ニワトリヒナ

 


形質転換ニワトリ作成のための支持細胞を使用しない ニワトリ胚盤葉細胞の単純培養

松原 悠子1・廣田あずさ・傍島英雄・鏡味 裕・田上 貴寛・安江 博

1農業生物資源研究所
茨城県つくば市、305-8602

キメラ形成能を有するニワトリ胚盤葉細胞に遺伝子を導入し、生殖系列キメラニワトリを介して次世代に形質転換ニワトリを得るのは、ひとつの有効な形質転換法である。しかし、in vitro で胚盤葉細胞を培養するには、一般的には支持細胞を必要とする。今回、ニワトリ胚盤葉細胞の培養と移植の簡素化を行うために、支持細胞を使用せずに生殖系列キメラ形成能を有する胚盤葉細胞の培養方法を試みた。黒色羽装を有する横斑プリマスロック(i/i)由来の胚盤葉細胞を培養し、ニワトリ胚性幹細胞が有する多能性細胞のマーカーであるALP活性、PAS陽性性、抗SSEA-1抗体、抗EMA-1抗体に対する反応性を調べた。その結果、培養した多くの細胞がこれらの性質を有していた。放卵直後、2日培養あるいは5日培養した胚盤葉細胞を、白色羽装を有する白色レグホン(I/I)のレシピエント胚に移植して キメラを作出した。キメラニワトリが、横斑プリマスロック由来の細胞を生殖細胞にもてば、後代には、黒色羽装の子孫を得ることができる。今回、支持細胞を使用せずに5日間培養した細胞は生殖系列キメラ形成能を有することが証明され、形質転換ニワトリを簡易に作出する一つの方法が提案できた。

キーワード: 胚盤葉細胞, ニワトリ, キメラ, 生殖細胞伝達性, 簡素化細胞培養法

 


鶏の腸管各部位における飼料穀物のアミノ酸消化率の比較

上曽山博・本田和久・長谷川信

神戸大学大学院農学研究科
神戸市 657-8501

腸管にフィステルを装着した鶏を用いて、飼料穀物であるトウモロコシ、ソルガム、小麦、皮麦及び裸麦の給与がアミノ酸の消化率に及ぼす影響を調べた。鶏の 空腸遠位部、回腸中央部、回腸遠位部或いは直腸遠位部にフィステルを装着した。上述の飼料穀物を唯一のタンパク質源として、それぞれの試験飼料に添加した。腸管内消化物をそれぞれの部位で採取し、消化物中のアミノ酸含量を測定した。鶏の腸の部位間におけるアミノ酸消化率に有意な違いは認められなかった。 しかしながら、皮麦飼料区においては、13種のアミノ酸(Asp、Thr、Ser、Gly、Ala、Val、Met、Ile、Leu、Tyr、Phe、 His及びArg)の消化率がトウモロコシ飼料給与区のそれに比べ有意に低かった。ソルガム、小麦或いは裸麦飼料給与区においては、それぞれ5種 (Gly、Met、Lys、His及びArg)、9種(Asp、Thr、Gly、Ala、Met、Ile、Leu、Tyr及びArg)或いは10種 (Asp、Thr、Ser、Gly、Ala、Val、Met、Ile、Leu及びTyr)のアミノ酸の消化率が、トウモロコシ飼料給与区のそれに比べ有意に低かった。これらの結果は、本研究で用いた飼料穀物の中でトウモロコシが最も高いアミノ酸消化率を示すこと及びサンプリング部位は飼料穀物のアミノ酸消化率に有意な影響を及ぼさないことを示す。

キーワード:アミノ酸消化率、大麦、トウモロコシ、ソルガム、小麦

 


マリーゴールド花の粉末またはその抽出物由来のルテインによる生および加熱卵における卵黄色の増強

Kanda Lokaewmanee1・山内 高円1・小森 勉2・斉藤 恵子2

1香川大学農学部応用生物科学科,香川県木田郡三木町, 761-0795
2コーキン化学株式会社,東大阪市中石切町,579-8014

マリーゴールド花(MFM)由来のケン化させないルテインならびにマリーゴールド花から抽出された(MFE)由来のケン化させたルテインが卵黄色に及ぼす影響について検討するために, 90羽の産卵鶏 (Boris Brown) を9区に分けた。基礎飼料 (18.0% CP, 2800 kcal/kg ME, 0% ルテイン, 対照区) にMFMまたはMFEのルテイン含量が両者とも10, 20, 30 および40 mg/kgになるように添加し,自由摂食下で3週間飼育した。摂食量と産卵については毎週記録し,卵質と卵黄色については毎週各区から5個の卵を用いて検索した。卵黄色はロシュカラーファンによる目視測定を行うとともに,分光色差計を用いて卵黄色,イエローインデックス,明度(L*),赤み(a*),黄色み(b*),黄色みに対する赤みの割合(a/b),彩度および分光反射率を客観的に測定した。摂食量,体重,産卵率,産卵量,卵殻強度,卵殻の厚さ,卵殻 率,卵白率,ハウユニットについてはルテイン添加による影響は見られなかった。40 mg/kg MFMルテイン区ならびに20, 30と40 mg/kg MFEルテイン区は対照区よりも濃い卵黄色を示した(P<0.001)。二元配置分散分析では,目視ならびに客観的卵黄色,a*およびa/bがルテ イン添加処理(P<0.05)およびルテイン添加濃度(P<0.001)によって改善された。以上の結果は,約30~40 mg/kgのルテインの添加は,卵黄色を濃くさせ,MFE由来のケン化させたルテインはMFM由来のケン化させないルテインよりも効果的であることを示唆する。

キーワード: 卵黄色,加熱卵,ルテイン,マリーゴールド, 分光色差計

 


産卵鶏へのアスタキサンチン給与は高温貯卵した有精卵の孵化率を改善する

齋藤文也・喜多一美

岩手大学大学院連合農学研究科、盛岡市上田3-18-8

本研究は、産卵鶏へのアスタキサンチン(AX)給与と貯卵条件(温度及び期間)の交互作用が有精卵の孵化率に及ぼす影響について調査することを目的とした。単冠白色レグホン産卵鶏を4群に分け雄鶏と共に飼育した。基礎飼料にファフィア酵母を添加することにより4レベルのAXを含む実験飼料を調製した。AXレベルは0、5、10及び20ppmとした。各群から得られた有精卵は、湿度70%、温度10℃または21℃で0、4、7、14及び21日間貯卵した。孵化した雛の数を数え、孵化しなかった卵は胚の死亡日齢を調べた。10℃で貯卵した場合、貯卵期間に関わらず高い孵化率が維持され、産卵鶏へのAX給与は孵化率に影響を及ぼさなかった。一方、21℃で貯卵された有精卵の孵化率は、10℃で貯卵された場合より有意に低く、産卵鶏へのAX給与により孵化率は上昇した。産卵鶏用飼料のAX含量が0 ppmから20 ppmまで増加すると、21℃貯卵により低下した孵化率は段階的に改善された。孵卵開始から7日間における胚の死亡率において飼料中AXレベルと貯卵温度との間に交互作用が認めら、21℃貯卵における胚の死亡率の抑制に効果を示した。これらの結果より、産卵鶏へのAX給与は高温貯卵によって低下した孵化率を改善させることが明らかとなり、このAXによる孵化率上昇効果は胚発生の初期段階において有効であることが示唆された。

キーワード:アスタキサンチン、産卵鶏、貯卵温度、ファフィア・ロドチーマ、孵化率

 


鶏筋芽細胞の分化に伴うタンパク質分解関連遺伝子発現の変化

中島一喜・石田藍子・勝俣昌也

畜産草地研究所、茨城県つくば市池の台2、305-0901 

 鶏筋芽細胞の分化における骨格筋のタンパク質分解関連遺伝子発現の推移を調べた。鶏筋芽細胞の分化(MyoDならびにMyogenin mRNA発現)が促進され、増殖(PAX-7 Myogenin mRNA発現)が抑制されると同時に、タンパク質分解関連遺伝子(ユビキチン、プロテアソームC2サブウニット、m-calpain大サブユニット、カテプシンB、カスパーゼ3 mRNA)発現も減少した。以上の結果は、鶏筋芽細胞の分化促進には、タンパク質分解関連遺伝子発現の減少がが重要である可能性が示唆された。

 


凍結融解操作がニワトリ始原生殖細胞の生存性および機能性に及ぼす影響

中村隼明1,2,3・臼井文武1・宮原大地1・森貴史1・今井一樹1・渡辺晴陽1・ 小野珠乙1・武田久美子2・ 韮澤圭二郎2・鏡味裕1・田上貴寛2

1 信州大学農学部 上伊那郡南箕輪村 399-4598 2 畜産草地研究所 つくば市 305-0901 3 日本学術振興会 特別研究員DC2

始原生殖細胞(PGCs)によりニワトリ遺伝資源を安定的かつ恒久的に保存するには、凍結融解操作がニワトリPGCsの生存性および機能性へ及ぼす影響を明らかにする必要がある。PGCsは白色レグホーン種(WL)、横班プリマスロック種(BPR)、ファイオミ種(FA)胚の血液中よりそれぞれ収集した。なお、移植による機能解析を行うため、一部のPGCsを蛍光標識した。100個のPGCsを1単位としたグループを形成し、それぞれ試験に用いた。凍結区ではPGCsを緩慢冷却法により凍結後、液体窒素中にて1ヶ月間保存した。融解は定法に従いおこなった。一方、非凍結区ではただちにPGCsを生死判定あるいは移植に用いた。凍結融解後におけるPGCsの回収率は54.3%であり、品種間に差はみられなかった。PGCsの生死判定はトリパンブルー染色により行った。凍結区におけるPGCsの生存率(85.7 %)は非凍結区(99.2 %)と比較して有意に低く(P < 0.05)、品種間に差はみられなかった。凍結区では融解後に回収されたPGCsから、非凍結区では100個のPGCsからおのおの30個を選び、WL胚の血流中へ移植した。凍結融解後のPGCsを移植した場合、5日胚生殖巣において観察された標識PGCsの数は、非凍結区のPGCsを移植した場合の52.8%であった (P < 0.05)。また、非凍結区では、品種間において観察された標識PGCsの数に有意な差がみられ、WLが最も多く、次いでFA、BPRの順であった(P < 0.05)。以上の結果より、凍結融解操作に伴うダメージにより、ニワトリPGCsの機能性が低下することが示唆された。また、凍結融解後における回収率と生存率を考慮に入れた場合、凍結保存したPGCsの約46.5%が融解後に利用可能と推察された。

キーワード: ニワトリ、始原生殖細胞、凍結融解操作、生存性、機能性

 


ニワトリ白血病阻害因子を用いて樹立した新規ニワトリ胚性幹細胞の特徴

中野幹治1・有澤謙二郎2・横山聡美1・西本真樹2・山下裕輔1・ 坂下真耶1・江崎僚2・松田治男1・古澤修一1・堀内浩幸1,2

1広島大学大学院生物圏科学研究科 東広島市 739-8528
2広島県産業科学技術研究所 東広島市 739-0046

 遺伝子組換えニワトリは、基礎研究から応用研究分野まで幅広い利用が期待され、その作出方法のルートの一つとして、胚性幹(ES)細胞がある。本研究では、ニワトリ由来の白血病阻害因子を用いることによって、新規のニワトリES細胞(cESC)を樹立し、その特徴解析を行った。新規cESCは、100日以上の長期継代培養が可能であり、多能性マーカーであるニワトリNanog(chNanog)および生殖細胞特異的因子であるchicken vasa homolog(Cvh)の発現を維持していた。また、enhanced green fluorescent protein(EGFP)遺伝子導入後、1細胞からの細胞クローニングが可能であり、その後もchNanogやCvhの発現が維持されていた。これらの結果は、cESC中のCvh陽性細胞が長期間にわたって増殖を繰り返すことができることを示している。この細胞をレシピエント胚へ移植した結果、胚血液中を循環する始原生殖細胞(PGC)や生殖隆起に移動するPGCでEGFPの発現を観察した。またこの移植実験では、胚全体でのEGFPの発現、また羽毛色キメラニワトリを誕生させることも可能なことから、多能性も維持されていることが明らかとなった。これらの結果から、我々が樹立した新規cESCは、遺伝 子組換えニワトリの作成へ向けた有効な手段となり得るものと考えられる。

キーワード:ニワトリ胚性幹細胞、始原生殖細胞、chNanog、Cvh、ニワトリ白血病阻害因子

 


産卵鶏子宮部におけるトリβ-ディフェンシン-3および-11蛋白密度のリポ多糖刺激に伴う変化

Ahmad M. Abdel Mageed・磯部直樹・吉村幸則

広島大学大学院生物圏科学研究科,東広島市 739-8528

本実験は産卵鶏子宮部に発現するトリβ-ディフェンシン(avβD)-3および-11蛋白の密度がリポ多糖(LPS)による刺激で変化するかどうかを明らかにすることを目的とした.産卵鶏の卵管をLPS投与前および投与3,6,12時間後に採取し,子宮部のパラフィン切片を作製した.これにavβD -3または-11に対する免疫染色を施して,免疫反応産物の密度を画像解析した.avβD -3免疫反応産物は粘膜上皮細胞の核上部細胞質に認められ,avβD -11の産物は同上皮細胞の頂部に検出された.avβD -3の免疫反応産物密度はLPS投与後3時間に一時的な低下を示し,その後に元のレベルに回復した.avβD -11の免疫反応産物密度はLPS投与3時間と12時間に有意に増加した.これらの結果から,avβD -3と-11は子宮部の粘膜上皮に局在し,LPS刺激により刺激されるとavβD -3は同細胞から分泌され,またavβD -11は同細胞内で産生されて蓄積するものと推定された.これらのavβDは子宮部の局所的な宿主防衛のために働くものと思われた.

 

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