2011年(48巻)第2号【HTML】

第2号(英文誌)

研究報告

遺伝・育種

エジプト在来ハト品種の遺伝的多様性    (要旨)
Sherif RAMADAN・阿部秀明・山浦純一・小野田智昭・三宅武・井上-村山美穂

飼料・栄養

鶏の腸管各部位におけるコメのアミノ酸消化率    (要旨)
本田和久・上曽山博・池上賢伍・長谷川信

絶食処理ブロイラーの筋特異的ユビキチンリガーゼatrogin-1/MAFbxの遺伝子発現と骨格筋タンパク質分解との間には高い正の相関がある    要旨
大塚彰・川富典子・中島一喜・荒木太郎・林國興

生理・繁殖

ブロイラーにおける孵化4日前の孵卵温度操作が孵化率、孵化後の能力、暑熱適応能に及ぼす影響   (要旨)
Ingrid Halle・Barbara Tzschentke

ニワトリ7日胚生殖巣生殖細胞の新規分離法の開発    (要旨)
中島友紀・峰松健夫・内藤充・田島淳史


孵卵19日目ニワトリ胚精巣と卵巣より採取した生殖細胞(gonocytes)の培養とレシピエント胚生殖巣への導入    (要旨)
内藤充・春海隆・桑名貴


鳥類卵殻クチクラ層の多様性    (要旨)
楠田哲士・岩澤淳・土井守・大矢豊・ 吉崎範夫


急性単離ストレスに対するニワトリヒナの血液性状と間脳CRHおよびAVT遺伝子発現の時間経過的変化    (要旨)
柳田光一 ・白石純一 ・河上眞一 ・豊後貴嗣

(研究ノート)
グレリンのin ovo投与と初生雛のプロラクチンレベルへの影響    (要旨)
Alireza Lotfi ・Habib Aghdam Shahryar ・Jamshid Ghiasi Ghaleh-Kandi ・Hiroyuki Kaiya ・ Alireza Ahmadzadeh

環境・管理


産卵鶏排泄物におけるアンモニア排出の経時的変化 (要旨)
Justin H. Chepete・H. Xin・H. Li

(研究ノート)
家禽敷料の揮発性脂肪酸低減効果に関する化学薬品添加の影響  ―検査実験―    (要旨)
Sam Churl Kim・Seong Joon Yi ・In Hag Choi



 

要 旨

 



第2号(英文誌)


エジプト在来ハト品種の遺伝的多様性

Sherif RAMADAN1、 2・阿部秀明1・山浦純一3・小野田智昭4・三宅武4・井上-村山美穂1

1京都大学野生動物研究センター、京都市 606-8203
2ベンハ大学獣医学部、モシュトホル、エジプト
3日本鳩レース協会常南連合会、柏市277-0087
4京都大学大学院農学研究科、京都市 606-8502

  ハトは食用、観賞用、レース用、実験用など多様な目的で改良されており、エジプトでは古来より、食用のみならず通信にも用いられてきた。本研究では、エジプトの6品種(n = 110)と日本のレースバト(n = 23)計133個体の遺伝的多様性を解析した。品種あたり1個体のミトコンドリアCOI配列を解析し、また全個体のマイクロサテライト11座位の型判定を行った。COI配列の比較により、7集団はすべてドバト(Columba livia)と同一クラスターに属することがわかった。マイクロサテライト11座位の型判定により、計89アレルが見いだされ、座位あたりの平均アレル数は8.1であった。ヘテロ接合率の期待値はエジプト6品種で0.580、日本のレースバトで0.630であった。7集団のFSTは0.203と比較的高い分化を示した。エジプトのZagelと日本のレースバトの組合せは、FST(0.108)とNeiの遺伝距離(0.154)の両方で最も低い値を示した。ハトは農業および産業的に重要な家禽であり、本研究で得られた情報は、本種の持続的な選抜改良計画に役立つと考えられる。

キーワード:エジプト在来品種、遺伝的多様性、マイクロサテライト、ミトコンドリアCOI、ハト

 

鶏の腸管各部位におけるコメのアミノ酸消化率

本田和久・上曽山博・池上賢伍・長谷川信

神戸大学大学院農学研究科 神戸市 657-8501

近い将来、飼料及び燃料用のトウモロコシの世界的需要は急速に上昇すると考えられる。コメはトウモロコシの代替品の候補となる穀物の一つである。しかしながら、ニワトリの消化管におけるコメのアミノ酸消化率は未だ調べられていない。本研究では、腸管にフィステルを装着したニワトリを用いて、コメ(玄米)のアミノ酸消化率を調べた。鶏の空腸遠位部、回腸中央部、回腸遠位部或いは直腸遠位部にフィステルを装着した。腸管内消化物をそれぞれの部位で採取し、消化物中のアミノ酸含量を測定した。ニワトリにはコメ飼料、コメ-魚粉飼料或いはトウモロコシ主体飼料を給与した。ニワトリの腸の部位間における真のアミノ酸消化率に有意な違いは認められなかった。しかしながら、コメ飼料において、アルギニンを除く、測定した総てのアミノ酸の消化率は、トウモロコシ主体飼料のそれに比べ有意に高かった。又、コメ-魚粉飼料において、チロシンを除く測定した総てのアミノ酸の消化率は、トウモロコシ主体飼料のそれに比べ有意に高かった。これらの結果から、ニワトリの飼料において、コメがトウモロコシの代替品として使用できる可能性が示唆された。

キーワード:アミノ酸消化率、トウモロコシ、魚粉、フィステル、コメ

 

絶食処理ブロイラーの筋特異的ユビキチンリガーゼatrogin-1/MAFbxの遺伝子発現と骨格筋タンパク質分解との間には高い正の相関がある

大塚彰1・川富典子1・中島一喜2・荒木太郎1・林國興1

1鹿児島大学農学部 生物資源化学科 鹿児島市郡元1-21-24 890-0065
2畜産草地研究所 分子栄養研究チーム つくば市池の台2 305-0901

本研究では、ブロイラーの骨格筋タンパク質分解と筋特異的ユビキチンリガーゼatrogin-1/MAFbxの遺伝子発現に対する絶食の影響を調べた。24時間あるいは48時間の絶食に応答して、体重および胸筋重量は時間依存的に減少した。筋原線維タンパク質分解の指標である筋組織の遊離Nt-メチルヒスチジン含量は絶食24時間で給餌対照区の1.8倍に、48時間では2.5倍にまで増加した。絶食に応答してatrogin-1/MAFbx遺伝子発現は時間依存的に顕増し、48時間ではmRNAの誘導は給餌対照区の20倍にまで上昇した。一方、20SプロテアソームC1およびC2サブユニットの遺伝子発現は絶食時間に伴って減少する傾向を示した。ユビキチン遺伝子の変化に有意差はなかった。Atrogin-1/MAFbx遺伝子発現量は、胸筋重量とは直線的な高い負の相関(r2=0.754, P<0.001)を示し、一方で筋遊離Nt-メチルヒスチジン含量とは直線的な高い正の相関(r2=0.784, P<0.001)を示した。以上の結果よりatrogin-1/MAFbxは骨格筋タンパク質分解の促進に重要な役割を果たしており、その遺伝子発現はタンパク質分解の信頼できる指標となることが示された。

キーワード:  atrogin-1/MAFbx、ブロイラー、絶食、骨格筋タンパク質分解、Nt-メチルヒスチジン

 

ニワトリ7日胚生殖巣生殖細胞の新規分離法の開発

中島友紀1・峰松健夫2・内藤充3・田島淳史1

1. 筑波大学生命環境科学研究科、〒305-8572 茨城県つくば市天王台1-1-1
2. 東京大学医学系研究科、アドバンストスキンケア(ミスパリ)寄附講座 〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1
3. 農業生物資源研究所、遺伝子組換え家畜研究センター、 〒305-8602 茨城県つくば市池の台2

ニワトリにおける生殖系列キメラの作製は鳥類遺伝資源の保存に大変有効である。生殖系列キメラの作製には、ニワトリ初期胚より回収可能な始原生殖細胞および生殖巣生殖細胞(GGCs)が用いられている。これまで様々なGGCsの回収方法が報告されてきたが、いずれも効率的ではなく、より効率的な回収方法の開発が求められている。そこで本研究では、ニワトリ初期胚におけるGGCsの新規分離法を開発することを目的とした。ニワトリ7日胚から取り出した生殖巣をCa2+およびMg2+を含まないリン酸緩衝生理食塩水(PBS[-])に浸漬し、37.8℃で24時間培養した。培養開始後30分に生殖巣からGGCsが遊離されるのが観察された。遊離したGGCs数は培養開始後12時間まで増加した。一方、遊離した総細胞数に対するGGCs数の比率(純度)は培養開始後90分までは約50%であったが、その後低下した。雌胚においては、右側生殖巣に比べ左側生殖巣から有意に多くのGGCsが遊離した(P<0.05)。本方法を用いて遊離したGGCsの移住能を検討するため、50個の遊離GGCsをPKH26で蛍光染色した後、2日胚の血管内に移植した。移植5日後、レシピエント胚の生殖巣からPKH26陽性で形態的にGGCsを示す細胞が観察された。以上の結果より、初期胚由来の生殖巣をPBS[-]内で培養することにより、レシピエント胚生殖巣への移住能を有するGGCsを高純度で回収することが可能であることが示された。

キーワード:ニワトリ、生殖巣生殖細胞、分離、PBS[-]

 

孵卵19日目ニワトリ胚精巣と卵巣より採取した生殖細胞(gonocytes)の培養とレシピエント胚生殖巣への導入

内藤 充1・春海 隆1・桑名 貴2

1農業生物資源研究所、茨城県つくば市 305-8602
2国立環境研究所、茨城県つくば市 305-8506

ニワトリ胚精巣中の生殖細胞(gonocytes)には幹細胞が含まれており、この細胞を培養増殖することにより精原幹細胞を樹立できる可能性がある。精原幹細胞は精子に特異的に分化できるため、遺伝子操作等にとって極めて有用な細胞になると考えられる。本研究では、ニワトリ胚精巣と卵巣から採取した生殖細胞を集めて、インビトロで培養増殖することを試みた。孵卵19日目胚(横斑プリマスロック種)より精巣と卵巣を採取し、トリプシン処理により細胞を分散した後、ディッシュで培養した。培養した細胞は大多数が体細胞であることから、生殖細胞を濃縮するためディッシュを軽く振盪して非接着細胞を集め、培養を継続した。培養中の生殖細胞はCVH抗体により同定し、増殖能を調べた。一方で、培養した精巣由来生殖細胞に蛍光ラベルし、孵卵2.5日目のレシピエント胚(白色レグホーン種)の血流中あるいは体腔上皮へ移植し、生殖巣への導入を試みた。ディッシュへの非接着細胞を集めることにより、体細胞を排除し、生殖細胞を濃縮することができた。培養した精巣由来生殖細胞は一部で増殖が認められた。CVH抗体により調べた結果、生殖細胞が分散して増殖している場合と、塊になって増殖している場合が観察された。培養した生殖細胞をレシピエント胚の体腔上皮へ移植した場合のみ、一部の細胞ではあるが、レシピエント胚生殖巣へ導入された。しかし、卵巣から採取した生殖細胞はインビトロでの増殖は観察されなかった。以上の結果より、ニワトリ胚精巣から採取した生殖細胞のインビトロでの培養は可能であり、培養生殖細胞の一部はレシピエント胚生殖巣へ導入できることが明らかになった。

キーワード:ニワトリ、培養、胚、生殖系列キメラ、生殖細胞

 

鳥類卵殻クチクラ層の多様性

楠田哲士1・岩澤淳1・土井守1・大矢豊2・ 吉崎範夫1

1 応用生物科学部、岐阜大学、岐阜市501-1193
2 工学部、岐阜大学、岐阜市501-1193

Key words: calcite, cuticle layer, eggshell, phosphorus, vaterite.

 卵殻クチクラ層の構造とミネラル成分が、5種類の鳥類で調べられた。卵殻結晶柱の最頂部で測定したクチクラ層の厚さは、赤色野鶏で約1?m、モモイロペリカンで約130?m、日本ウズラで約10?m、ヨーロッパフラミンゴで約110?m、フンボルトペンギンで約45?mであった。EDTAで脱灰したクチクラ層の基質は、すべての鳥で共通して、いろいろなサイズの小胞で構成されていた。X線微小分析装置で検出されたクチクラ物質中の主要な元素は、O、C、CaとPで、これらの原子数の割合はこの順番で減少した。ウズラ、フラミンゴとペンギンのクチクラ中のPの割合は、赤色野鶏とペリカンのそれと比べて有意に高かった。走査電顕像に元素マッピングを行うと、Caのシグナルは卵殻層に強く、クチクラ層に弱く現れた。一方、Pのシグナルはほとんどクチクラ層に限って現れた。X線回折装置で卵殻の内側から結晶回折を行うと、すべての鳥類で炭酸カルシュウムのカルサイト結晶型を示した。クチクラ物質中では、その型は赤色野鶏ではカルサイト型、ペリカンではカルサイトとバテライトの混合型であった。ウズラ、フラミンゴとペンギンのクチクラ物質は結晶の存在を示す結果が得られなかったが、このことはミネラル化合物が非結晶型であることを示している。これらの結果は、クチクラ層のミネラル構造の多様性は、クチクラ基質の構造に加えて、リンの存在によってもたらされることを示唆している。

 

急性単離ストレスに対するニワトリヒナの血液性状と 間脳CRHおよびAVT遺伝子発現の時間経過的変化

柳田光一 1)・白石純一 1)・河上眞一 1)・豊後貴嗣 1, 2)

1) 広島大学大学院生物圏科学研究科、東広島市 739-8528
2) 広島大学日本鶏資源開発プロジェクト研究センター、東広島市 739-8528

 ストレス刺激を評価することは、家禽の生産性のみならずアニマルウェルフェアの観点からも重要な課題である。本研究では、ニワトリヒナにおける単離ストレスの影響について評価することを目的とし、単離(5、10あるいは30分)後の血漿グルコース、遊離脂肪酸およびコルチコステロン(CORT)ならびに間脳のコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)およびアルギニン?バソトシン(AVT)のmRNAを調査した。血漿グルコース濃度は、処理の有無およびその時間に関わらず変化は認められなかったが、血漿遊離脂肪酸の場合、単離30分のヒナにおいて無処理ヒナと比較して有意に高い値を示した(P<0.01)。血漿CORT濃度については、単離5および10分のヒナにおいて無処理ヒナよりも高い値を示したものの(P<0.01)、単離30分のヒナにおいて差は認められなかった。間脳遺伝子発現量では、単離10分のヒナにおいてのみCRHが高い値を示したが、AVTの場合、処理の有無およびその時間に関わらず差は認められなかった。以上の結果から、ニワトリヒナ中枢において、CORTのフィードバックによるCRH合成抑制は、単離30分以前に生じること、さらに間脳AVTの遺伝子発現量は、急性単離ストレスの評価指標として適切でないことが示唆された。

キーワード:単離ストレス、コルチコステロン、CRH、AVT、間脳、ニワトリヒナ

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