2011年(48巻)第3号【HTML】

第3号(英文誌)

総 説

高温環境下におけるニワトリ飼育効率と生産性維持のための栄養戦略 (要旨)
Ahmad Mujahid

研究報告

遺伝・育種

名古屋種の遅羽性系統における速羽性表現型への復帰突然変異の特徴 (要旨)
中村明弘・石川 明・長尾健二・渡邉久子・内田正起・神作宜男


二郎山鶏における細胞性レチノール結合タンパク質(CRBP2)遺伝子多型と産卵形質との関係 (要旨)
Li-Hua Xiao・ Shi-Yi Chen・ Xiao-Ling Zhao・Qing Zhu・ Yi-Ping Liu


ニホンウズラおよびインド在来鶏におけるToll様受容体15遺伝子の分子構造の特徴とそのmRNA発現パターン (要旨)
Kannaki T. Ramasamy・Premchandra Verma・Maddula R. Reddy・Shanmugam Murugesan


日本の烏骨鶏はミトコンドリアの完全長D-loop塩基配列から得られた分子系統樹上で幅広く分布している (要旨)
ジャーハン・ローシャン・熊谷美幸・西堀正英・安江 博・和田康彦

(研究ノート)
複数のニワトリ品種におけるK遺伝子連鎖領域の配列解析 (要旨)
神作宜男・Daniel Guemene・中村明弘・内田正起

飼料・栄養

抗菌剤摂取はふ化後ブロイラーヒナの腸管免疫成熟速度を速める (要旨)
高橋和昭・三浦美子・水野孝紀


実験的にEimeria Acervulina及びEimeria Maximaに感染させられたブロイラーの成績に及ぼすオレガノ製飼料添加物の影響 (要旨)
Anastasios Tsinas・Ilias Giannenas・Chrisa Voidarou・Athina Tzora・John Skoufos


ブロイラーの生産性および肉質に及ぼす麹(A.awamori および A. niger)給与の影響 (要旨)
アハマド A.サレー・ヤーヤ Z.イド・タレク A エバイド ・神園巴美・大塚彰・林 國興

生理・繁殖

高温環境曝露が産卵鶏の卵生産と血中リポタンパクおよび卵胞ステロイドホルモン生成に及ぼす影響 (要旨)
吉田菜美 ・藤田正範 ・中原崇博 ・桑原徹平 ・河上眞一 ・豊後貴嗣

免疫・衛生

(研究ノート)
始原生殖細胞のMycoplasma synoviae 垂直感染率に関する予備的研究 (要旨)
大沼学・桑名貴



 

要 旨

 


第3号(英文誌)


名古屋種の遅羽性系統における速羽性表現型への復帰突然変異の特徴

中村明弘1・石川 明2・長尾健二1・渡邉久子1・内田正起1・神作宜男3

1愛知県農業総合試験場畜産研究部, 愛知県愛知郡長久手町岩作 480-1193
2名古屋大学大学院生命農学研究科, 愛知県名古屋市千種区不老町 464-8601
3麻布大学獣医学部, 神奈川県相模原市中央区淵野辺 252-5201

ニワトリの遅羽性系統では速羽性の表現型を示す雌ヒナが稀に出現することが知られている。しかしながら,その復帰突然変異の発生に関する詳細な研究はこれまでにほとんど報告されていない。本研究は,名古屋種の遅羽性系統の3世代(G7-G9)でみられた復帰突然変異した雌個体の出現率を調査し,さらに,速羽性に復帰突然変異した個体のDNA構造の特徴を明らかにするために行われた。その結果,速羽性に復帰突然変異した雌個体は3世代で合計5羽(G7: 376羽中3羽,G8: 383羽中1羽,G9: 409羽中1羽)が観察され,その出現率はG7で0.80%,G8で0.26%,G9で0.24%であった。また,2種類のPCRと1種類のRFLP- PCRによるDNA解析の結果,名古屋種では2種類の復帰突然変異体(タイプⅠが3羽,タイプⅡが2羽)が存在することが確認され,速羽性への復帰突然変異はニワトリ白血病ウイルス由来の内在性ウイルス遺伝子ev-21の挿入と重複によって生じた相同領域であるORとUR-Kのどちらかの欠失が関わっていることが示された。さらに,速羽性に復帰突然変異した雌個体の全姉妹および半姉妹の表現型はすべて遅羽性であったため,復帰突然変異した雌の父鶏はZ染色体の一方にあるev21-K複合遺伝子座のORあるいはUR-Kがすでに欠失していたのではなく,精子形成時に欠失が生じていたことが示唆された。

 

日本の烏骨鶏はミトコンドリアの完全長D-loop塩基配列から得られた分子系統樹上で幅広く分布している

ジャーハン・ローシャン1・熊谷美幸2・西堀正英3・安江 博4・和田康彦2

1鹿児島大学連合農学研究科、鹿児島市 890-8580
2佐賀大学農学部、佐賀市 840-8502
3広島大学生物圏科学研究科、東広島市 739-8528
4農業生物資源研究所、つくば市 305-8602

烏骨鶏(Gallus gallus var. domesticus)はその外観や習性において他の鶏品種と大きく異なっている。烏骨鶏は日本在来鶏の1種であり、江戸時代以前から日本で飼育されていた。烏骨鶏の起源はインドで、中国と日本で確立されたと考えられているが、その歴史や他の品種との遺伝的関連性は不明確である。本研究では、27羽の烏骨鶏と3羽のその他の品種について、ミトコンドリアの完全長D-loop領域の塩基配列を決定した。その結果、烏骨鶏には27か所の1塩基置換と4か所の1塩基挿入が認められた。これらの烏骨鶏と9羽の他の鶏品種、4羽の赤色野鶏、Oka et al. (2007)で示された42のハプロタイプから分子系統樹を作成し、その結果、5つのクレイドが得られた。烏骨鶏はそれら5つのクレイドすべてに存在した。これらの結 果は日本の烏骨鶏が大きな遺伝変異を持つことを示しているが、佐賀県畜産試験場を除いて、場所別で見ると烏骨鶏は1,2のクレイドに属しており、5羽の黒羽の烏骨鶏がAクレイドに属していた。ミトコンドリアD-loopの分子系統樹上で日本の烏骨鶏が広く分布していることから、古いアジア品種に烏骨鶏を規定するような特殊な形質を持ったいくつかの品種が交雑された可能性が示唆された。

 

複数のニワトリ品種におけるK遺伝子連鎖領域の配列解析

神作宜男1・Daniel Guemene2・中村明弘3・内田正起3

1麻布大学獣医学部, 神奈川県相模原市中央区淵野辺 252-5201
2フランス国立農業研究所鳥類研究ユニット ツール、フランス
3愛知県農業総合試験場畜産研究部, 愛知県愛知郡長久手町岩作 480-1193

 ニワトリ白血病ウイルス由来の内在性ウイルス遺伝子ev21はZ染色体上に存在する遅羽性(K)遺伝子と連鎖している。K遺伝子はZ染色体上で部分的に重複した配列であるev21挿入領域(OR)と非挿入配列(URa)と連鎖している。また、ev21が挿入されていない染色体にも類似配列(URb)が存在しており、これらはわずかな違いはあるが、ほぼ同じ配列である。遅羽性遺伝子は速羽性(k+)に対して優性である事から速羽性の雄と、遅羽性遺伝子をもつ雌とを交配させる事により雛の性を簡易に判定する事が出来る。この羽性による性鑑別を行うためには、遅羽性と速羽性の2種類の系統を必要とする。白色レグホーンでは、URa及びURbにおける配列の違いを利用した制限酵素断片長多型(RFLP)によって、遅羽性の雄の遺伝子型(K/KとK/k+)を効率的かつ正確に判定できることが明らかにされている。しかしながら、白色レグホーン以外の品種でRFLPによりURaとURbの違いを検出し、遺伝子型判定が可能であるか否かは不明であった。本研究は、名古屋種、岐阜地鶏、ウコッケイ、ジェリーンが内在性ウイルス遺伝子ev21を保持するのかを最初に検討し、次に保持する場合にはURa及びURbにおける塩基配列を決定した。岐阜地鶏ではev21は認められなかった。その他の種ではev21を保持している個体が認められ、URa及びURbの塩基配列決定及び比較を行った。URa及びURbにはそれぞれ2種類の配列(URa-1, URa-2, URb-1, URb-2)の存在が示され、これらの配列の中には白色レグホーンにおいて開発されたRFLP法を使ったK/KとK/k+の区別が不可能である配列の存在が明らかにされた。ジェリーンにおいてはKと連鎖する領域の塩基配列は固定されていないことから、本来は複数存在した配列URa及びURbの配列が品種成立の過程で白色レグホーンや名古屋種では固定された可能性が示された。

 

抗菌剤摂取はふ化後ブロイラーヒナの腸管免疫成熟速度を速める

高橋和昭1,2・三浦美子1・水野孝紀1

1東北大学大学院農学研究科・仙台市青葉区堤通雨宮町1-1、〒981-8555
2現住所 山形県立米沢女子短期大学・米沢市通町6-15-1、〒992-0025

大豆粕・トウモロコシ主体の飼料を給与した条件下における、ふ化後ブロイラーヒナの上部および下部腸管の免疫機能の成熟に対する抗菌剤投与の影響を14日間にわたって調査した。腸管上部においては、3-8日齢時において、CD3, Bu-1,インターフェロン(IFN)-γ, インターロイキン(IL)-10, トール様受容体 (TLR)-2 and TLR-4 mRNA 発現は抗菌剤投与ニワトリで有意に高かった。腸管下部においても、腸管上部と類似した抗菌剤投与の影響が観察されたが、15日齢時のIFN-γ, Bu-1およびTLR-4 mRNA発現は抗菌剤無添加区で高かった。IL-18 mRNA発現は試験期間中を通じて抗菌剤無添加区で高い傾向にあった。以上の結果は、抗菌剤摂取はふ化後のブロイラーヒナの腸管免疫の成熟速度を速めることを示唆しており、抗菌剤の腸管免疫の成熟に対する作用は腸管上部で顕著であることも示唆している。

 

ブロイラーの生産性および肉質に及ぼす麹(A.awamori および A. niger)給与の影響

アハマド A.サレー1,2・ヤーヤ Z.イド1,2・タレク A エバイド2・ 神園巴美1・大塚彰1・林 國興1

1鹿児島大学 農学部 生物資源化学科、 鹿児島市 郡元 1-21-24, 890-0065
2カフルエルシェイク大学 農学部 家禽生産学科,  カフルエルシェイク、エジプト333516

 本研究の目的は麹(A.awamori および A. niger)給与によりブロイラーの生産性が改善され、肉質が向上することを示すことである。この実験では、15日齢の雄ブロイラーヒナ(平均体重 365g)42羽を1区6羽の7区(対照区、A. awamori あるいはA. nigerをそれぞれ0.01%、0.05および0.1%給与した6区)に分けた。麹は飼料に添加し、15日齢より12日間給与した。その結果、麹給与により飼料摂取量は減少したが増体は良くなり、飼料要求率は低下した。筋肉タンパク質分解速度の指標としての血中3-メチルヒスチジン含量は麹給与により低下する傾向を示した。また、麹給与により腹腔脂肪含量および血中コレステロール濃度は減少したが、筋肉内脂肪含量は増加した。一方、筋肉のα-トコフェロール含量は増加し、脂質酸化の指標であるTBARSは低下した。これは、麹に抗酸化活性があることを示している。さらに、興味あることに、麹給与により、筋肉脂肪中の飽和脂肪酸は減少し、不飽和脂肪酸は増加した。以上の結果は、麹(A.awamori および A. Niger)給与によりブロイラーの生産性と肉質が改善されることを示している。

キーワード:麹、ブロイラー、成長、不飽和脂肪酸

 

高温環境曝露が産卵鶏の卵生産と血中リポタンパクおよび卵胞ステロイドホルモン生成に及ぼす影響

吉田菜美 1)・藤田正範 1)・中原崇博 1)・桑原徹平 1)・河上眞一 1)・豊後貴嗣 1, 2)

1) 広島大学大学院生物圏科学研究科、東広島市 739-8528
2) 広島大学日本鶏資源開発プロジェクト研究センター、東広島市 739-8528

 高温環境曝露が産卵鶏の卵生産、卵質、血中リポタンパク質および卵胞ステロイドホルモン量に及ぼす影響について検討を行った。実験1では、白色レグホーン系産卵鶏(80~90週齢)を環境温度23、27および31℃で各1カ月間飼育し、その間の摂食量、直腸温および卵質を調査した。実験2では、環境温度23℃あるいは31℃で7日間飼育した産卵鶏(80週齢)の血中リポタンパク質および卵胞ステロイドホルモン濃度を測定した。実験1の結果、環境温度31℃において摂食量減少、直腸温の上昇および卵黄密度の低下が示され、環境温度27℃では卵黄密度の低下のみが確認された。実験2の結果、環境温度31℃に曝露した産卵鶏において血中VLDL濃度の上昇と卵胞のエストラジオール17-bおよびプロジェステロン含量の減少、アンドロステンジオン含量の増加が確認された。これらの結果から、暑熱環境下における産卵率低下は、摂食量減少のみを主因とするものではなく、血中リポタンパク濃度および卵胞ステロイドホルモン生成への影響によるところが大きいものと考えられた。

キーワード:暑熱環境、摂食量、卵生産指標、VLDL

 

始原生殖細胞のMycoplasma synoviae 垂直感染率に関する予備的研究

大沼学・桑名貴

独立行政法人国立環境研究所環境研究基盤技術ラボラトリー生物資源研究室 〒305-8506 茨城県つくば市小野川16-2

 Mycoplasma synoviaeの始原生殖細胞に対する垂直感染率について評価を行った。 M. synoviae 陽性の個体より卵54個を採取し始原生殖細胞を分離した。1個の卵から10個から214個の始原生殖細胞を分離した。分離した始原生殖細胞を卵別に Frey培地(2ml)に入れ、37°Cで2週間培養した。培養後、Frey培地よりDNAを抽出し、M. synoviae を検出するためにPCRを実施した。その結果、すべての培地が陰性であった。そのため、分離した始原生殖細胞にはM. synoviae が感染していない可能性が高いことが分かった。この結果は始原生殖細胞に対するM. synoviae の垂直感染はまれであること示唆するものである。ニワトリにM. synoviaeが感染した場合には淘汰が通常の処置である。しかし、M. synoviaeの感染を確認した場合であっても、始原生殖細胞を保存することによりニワトリの系統を保存することが可能である。始原生殖細胞の活用は特 にM. synoviaeに希少なニワトリが感染した場合、系統を保存するために有用な手法である。

キーワード:垂直感染、Mycoplasma synoviae、始原生殖細胞

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