2010年(47巻)第2号【HTML】

第2号(英文誌)

総 説

ブロイラー飼料としての酵素と有機酸の利用 (要旨)
Muhammad S. Anjum and Abdul S. Chaudhry

ニワトリに対する微生物給餌とその腸内細菌叢並びに免疫系にあたえる影響 (要旨)
Kyungwoo Lee, Hyun S. Lillehoj and Gregory R. Siragusa

研究報告

育種・遺伝

C2C12筋芽細胞における変異型WWP1遺伝子の導入によるmyosin heavy chain遺伝子の発現変化 (要旨)
松本 大和・陰場 由美・笹崎 晋史・藤原 哲・市原 伸恒・菊池 建機・万年 英之

マイクロサテライトマーカーによるホロホロチョウの遺伝的多様性の解析 (要旨)
Boniface B. KAYANG・Issaka Youssao・井上英治・Augustine Naazie ・阿部秀明・伊藤愼一・井上-村山美穂

ブロイラー2系統における筋肉形質への2つの異なる飼育条件の影響-光学顕微鏡的研究 (要旨)
Polak Magdalena, Przybylska-Gornowicz Barbara and Faruga Andrzej

  アリル特異的リアルタイムPCRにおける融解曲線解析を用いたニワトリMx遺伝子第2032座のSNP分析 (要旨)
Xiangqun Ye, Zongcheng Tan, Yueling Zhang and Kangsheng Li

(研究ノート)

ガチョウ初代肝細胞でインシュリンとブドウ糖によって誘導されたリポ蛋白質リパーゼ(LPL)遺伝子発現の調節とその組織分布 (要旨)
Chunchun Han, Jiwen Wang, Liang Li, Zhixiong Pan, Shouhai Wei and Feng Xu

(研究ノート)

ニワトリ水晶体特異的遺伝子に対する挿入型ターゲティングベクターの構築 (要旨)
福島祐二・佐藤正治・松田治男・古澤修一・堀内浩幸

飼料・栄養

Enterococcus faeciumとイヌリンを含むシンバイオティクスがブロイラーの成長成績とコクシジウム症抵抗性に及ぼす影響 (要旨)
Hossein A. Ghasemi, Mahmood Shivazad, Kasra Esmaeilnia, Hamid Kohram and Mohammad A. Karimi

ブロイラーにおける脂肪酸とカルシウムの消化性および脚異常に対する飼料トリグリセリド中sn-2飽和脂肪酸の影響 (要旨)
Chuan-Shun Lin and Shu-Hsing Chiang

ベルガモット(Citrus bergamia)油の添加が産卵鶏の産卵性、卵質および卵黄の脂肪酸組成に及ぼす影響 (要旨)
S. Canan Bolukbasi , M. Kuddusi Erhan and Hilal Urusan

繁殖・生理

ニワトリの最大卵胞の顆粒層細胞におけるカルシトニンの直接作用について (要旨)
中川-水谷内 香里, 高橋 哲也, 笠井 俊輔, 中山 広之, 川島 光夫

ニワトリの脂肪代謝を制御する局所性アグーチシグナルタンパク/メラノコルチンシグナル系 (要旨)
藪内雅文・板東可奈・平松美紗都・高橋純夫・竹内 栄

ウズラ卵殻形成過程における子宮上皮の形態学的および組織化学的変化 (要旨)
岩澤淳 ・ムハンマド A ラーマン・ツシャール K ロイ・森山昭彦 ・ 吉崎範夫

免疫・衛生

(研究ノート)

「サルモネラエンテリティデス(ファージ型4型)およびその3種の変異株による産卵鶏への感染実験」 (要旨)
  Seongbeom Cho, Nicole S. Crisp, Jessica R. Maley, Kristin M. Evon, Muhammad Younus, Mokhtar M. Arshad, Sangwei Lu and A.Mahdi Saeed



要 旨

 


第2号(英文誌)


C2C12筋芽細胞における変異型WWP1遺伝子の導入によるmyosin heavy chain遺伝子の発現変化

松本 大和1・陰場 由美1・笹崎 晋史1・藤原 哲2・市原 伸恒3,4・菊池 建機3・万年 英之1

1神戸大学大学院農学研究科、兵庫県神戸市灘区六甲台町 657-8501
2(財)日本生物科学研究所附属実験動物研究所、山梨県北巨摩郡小淵沢町上笹尾 408-0041
3国立精神・神経センター神経研究所モデル動物開発部、東京都小平市小川東町 341-2711
4麻布大学獣医学部、神奈川県相模原市淵野辺 754-7111

不要なタンパク質を除去するユビキチンリガーゼの一種WW domain containing E3 ubiquitin protein ligase 1 (WWP1)は、以前の研究によりニワトリ筋ジストロフィーの原因遺伝子と同定された。WWP1と発ガンとの関係は詳細に研究されているが、筋ジストロフィー発症における機能は不明である。ニワトリ筋ジストロフィーではmyosin heavy chain (MyHC)の幼鶏型から成鶏型へのアイソフォームの遷移が妨げられる。そこで本研究では、C2C12筋芽細胞に野生型及び変異型WWP1遺伝子を導入し、その影響をMyHC遺伝子等の筋分化マーカーを対象とした発現解析により分析した。WWP1遺伝子の過剰発現に伴いMyHC Ia遺伝子の発現は増加し、MyHC IIb遺伝子の発現は減少した。一方、変異型WWP1遺伝子を導入した細胞では、MyHC遺伝子の発現様式が変化し、WWP1遺伝子の変異が筋分化の異常を導くことが示唆された。これらの結果は、WWP1遺伝子が筋芽細胞の速筋型への分化を促進することを示しており、WWP1遺伝子の変異はニワトリ筋ジストロフィーの特徴である筋分化の異常を導くことを示唆していた。

キーワード:ニワトリ,遺伝子発現,筋ジストロフィー,myosin heavy chain,WWP1

 


マイクロサテライトマーカーによるホロホロチョウの遺伝的多様性の解析

Boniface B。 KAYANG1、 2・Issaka Youssao3・井上英治4・Augustine Naazie 5・阿部秀明1、 6・伊藤愼一7・井上-村山美穂1

1京都大学野生動物研究センター、京都市 606-8203
2ガーナ大学農業消費科学部、アクラ、ガーナ
3アボメィ-カラヴィ大学動物生産学部、アボメィ-カラヴィ、ベニン
4京都大学大学院理学研究科、京都市 606-8502
5ガーナ大学農業研究センター、アクラ、ガーナ
6神戸花鳥園、岐阜市 650-0047
7岐阜大学応用生物科学部、岐阜市 501-1193

 在来家畜集団の遺伝的多様性の情報は、将来人類が直面するであろう地球規模の難題や不確定要素、たとえば気候変動、疾病、人口増加、消費者の要望変化、などに対応するための、有用遺伝子の保全に不可欠である。本研究では、ガーナ3集団、ベニン1集団、日本2集団の、計232羽のカンムリホロホロチョウ(Numida meleagris)、およびアウトグループとしてフサホロホロチョウ(Acryllium vulturinum)3羽を用いて、常染色体マイクロサテライト6座位の型判定を行った。観察されたアリル数の合計は66で、1座位あたりのアリル数は平均11。0であった。ガーナおよびベニン由来の西アフリカの在来集団(Na = 9。8; Ho = 0。457; FST = 0。162)は、日本の集団(Na = 4。2; Ho = 0。236; FST = 0。389)と比較して、遺伝学的多様性が高かったが、分化の程度は小さかった。ホロホロチョウは、ニワトリの代替として、農業および産業的に重要な家禽であり、本研究で得られた情報は、本種の持続的な選抜改良計画に役立つと考えられる。

キーワード:遺伝的多様性、ガーナ、カンムリホロホロチョウ、マイクロサテライト

 


ニワトリ水晶体特異的遺伝子に対する挿入型ターゲティングベクターの構築

福島祐二1・佐藤正治2・松田治男1・古澤修一1・堀内浩幸1,2

1広島大学大学院生物圏科学研究科 東広島市 739-8528
2広島県産業科学技術研究所 東広島市 739-0046

遺伝子ターゲティングニワトリは、基礎研究や産業面で非常に有用であると期待されるが、これまで実現していない。そこで本研究は、相同組換えニワトリ作出の評価が簡便なδ1クリスタリン遺伝子(d1cry)に対する挿入型ターゲティングベクターを構築した。ゲノムPCRによって増幅した相同DNA配列(プロモーター配列不含)は、全7,402 kbであり、アンバー変異やフレームシフト変異は含まれていなかった。リンカー配列を付加したDsRed(linkerDsRed)は、PCRによって pCMV-DsRed-Expressから増幅し、人工的なエラーを含まない正確な塩基配列のクローンを取得した。loxPサイトで挟まれ、CAGプロモーターによって制御されるenhanced green fruorescent protein(EGFP)遺伝子、internal ribosome entry site(IRES)およびピューロマイシン耐性遺伝子(Pac)(PCAGEIP)は、遺伝子工学的手法によって構築した。これらの材料とpCC1BACをもとに、全長20.7 kbの挿入型ベクターを完成させた。このベクターは、相同組換えによりδ1クリスタリン遺伝子座にd1cry-DsRed融合遺伝子を形成することが予想される。そのため、多能性幹細胞などで相同組換えを起こさせた後、胚へ移植することで、ニワトリの形質転換を胚発生早期の水晶体特異的な赤色蛍光として迅速かつ容易に観察し、評価することができる。

キーワード:ニワトリ、δ1クリスタリン、遺伝子ターゲティング、挿入型ベクター

 


ニワトリの最大卵胞の顆粒層細胞におけるカルシトニンの直接作用について

中川-水谷内 香里1, 高橋 哲也2, 笠井 俊輔2, 中山 広之1 , 川島 光夫1,2

1 501-1193岐阜県岐阜市柳戸1-1 岐阜大学大学院連合農学研究科,
2 501-1193岐阜県岐阜市柳戸1-1 岐阜大学大学院 応用生物科学研究科 鳥類内分泌学研究室

産卵鶏の最大卵胞の顆粒層細胞にカルシトニンの受容体が存在するかどうかを明らかにするために、最大卵胞を採取して顆粒層細胞の細胞膜画分を調製し、125Iで標識したニワトリのカルシトニンに対する結合実験を行なった。その結果、ニワトリの最大卵胞の顆粒層細胞にはカルシトニンに対して結合特異性と結合飽和性を有し、高い結合親和性と小さい結合容量を持った、1種類のカルシトニン受容体と見なしうる物質が存在することが明らかとなった。さらにカルシトニンが卵胞顆粒層細胞において、黄体形成ホルモン(LH)によるプロジェステロン(P4)産生に及ぼす影響を明らかにするために、in vitro で最大卵胞(F1)の顆粒層細胞の培養実験を行なった。カルシトニンを単独で培養液に加えると、P4の産生は見られなかったが、LH と一緒にカルシトニンを加えるとP4産生における LH の感受性が低下し、P4産生量は減少した。本研究において、カルシトニンはニワトリのF1の顆粒層細胞に直接作用することにより、LH による P4産生を抑制することが示唆された。

 


ニワトリの脂肪代謝を制御する局所性アグーチシグナルタンパク/メラノコルチンシグナル系

藪内雅文・板東可奈・平松美紗都・高橋純夫・竹内 栄

岡山大学大学院自然科学研究科,岡山市北区津島中3-1-1

アグーチシグナルタンパク(ASIP)/メラノコルチンシグナル系は,ヒトでは脂肪代謝を制御するが,マウスではその作用がない。ニワトリの脂肪組織に局所性ASIP/メラノコルチンシグナル系が存在する可能性をRT-PCR解析により調べた。その結果,皮下および内臓の両脂肪組織において,メラノコルチン1受容体(MC1R)とMC5R,ASIP,およびメラノコルチン産生に関与するPOMCと2種類のプロホルモン転換酵素(PC1とPC2)がそろって発現していることが明らかとなった。このことから,脂肪組織に局所性ASIP/メラノコルチンシグナル系が存在する可能性が示唆された。この系の生物学的機能を調べるため,ニワトリに48時間の絶食を負荷した。絶食により,体重と脂肪組織の細胞サイズの減少が観察されるとともに,血漿中遊離脂肪酸は有意に増加し,グルコース,トリアシルグリセロール,インスリンレベルは減少することが明らかとなった。これは糖新生に繋がる脂肪分解が脂肪組織で起こったことを示す。このような条件下で,脂肪組織のASIP発現は低下し,POMC発現は上昇していた。ASIPは脂肪産生・蓄積ホルモンであり,メラノコルチンは脂肪分解・動員ホルモンとしてそれぞれ知られている。本研究成果は,ニワトリの脂肪組織に局所性ASIP/メラノコルチンシグナル系が存在し,脂肪代謝を制御している可能性を強く示唆する。本論文はまた,脊椎動物の脂肪組織において,ASIP発現がエネルギー欠乏状態下で低下することを示した初めての報告でもある。

キーワード:脂肪,ASIP,ニワトリ,メラノコルチン,POMC

 


ウズラ卵殻形成過程における子宮上皮の形態学的および組織化学的変化

岩澤淳 1・ムハンマド A ラーマン1・ツシャール K ロイ1・ 森山昭彦 2・ 吉崎範夫 1

1 動物生産利用学講座、連合大学院農学研究科、岐阜大学、岐阜市501-1193
2 自然科学研究教育センター、名古屋市立大学、名古屋市467-8501

 この研究は日本ウズラCoturnix japonicaの子宮で、卵殻マトリックスが生産される場所とその期間を決定することを目指した。EDTA処理による脱灰で得られた卵殻マトリックスを電気泳動し、得られた116 kDaバンドに対する抗血清を作成した。116 kDaタンパクのN-末アミノ酸配列はニワトリovocleidin-116と高い相同性があった。免疫組織化学法と免疫電顕法による観察で、116 kDaタンパクは子宮粘膜上皮の分泌細胞で生産され、放卵後7時間目から20時間目の間に分泌され、卵殻マトリックスの構造に組み込まれることが分かった。走査電顕法により、粘膜上皮に10 μm径の円柱が21時間目まで出現し、その後消失することが観察された。これらの円柱の出現は、卵殻の鋭端部に面する上皮では、赤道部や鈍端部に面する上皮に比べて、あまり顕著ではなかった。他方、卵殻表面にある気孔の穴の数も、鋭端部では赤道部や鈍端部に比べて、有意に少なかった。我々の結果は、気孔の穴は、子宮上皮に現れる円柱が卵殻完成後に退縮して形成されることを示している。

 

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